「イッツジャズ」レーベル

----- スイングジャーナル2007年11月号より -----
記事

光(フォトン)

この力量、本当にハタチか?
日本に限らず世界を視野に、
シーンに降り注ぐ“若き光”

 コントラバスの木村将之(きむら・まさし)、ドラムスの赤迫翔太(あかさこ・しょうた)、ピアノの伊賀拓郎(いが・たくろう)、そしてバイオリンの白須今(しらす・こん)という、20歳を越えたばかりの新鋭4人で構成される光(フォトン)。2006年、ピアノ・トリオにバイオリンというスタイルでジャズ界に“光”のごとく登場した彼らの待望のセカンド・アルバム『アイリッシュ・フォトン』がリリースされた。
 オリジナルに加えてアストル・ピアソラやショパン、パガニーニの楽曲を大胆にジャズで聴かせたデビュー作『PHOTON』につづく今作は、そのタイトル通 り、アイリッシュ(ケルト)・ミュージックとジャズを鮮やかに融合させた新感覚のジャズ・サウンドだ。「キャリックファーガス」「エレノア・プランケット」や「ダニー・ボーイ」といったトラディショナルを中心に、ショパンの「ノクターン20番」やベートーベンの「運命」、そして唯一のオリジナル「眺」など、高尚な室内楽のような雰囲気を醸す一方、突如ドラマティックな音の疾走を見せるなど、「さすがフォトン!」とうならせる“光世界”を今回も聴かせてくれる。
“若さ”が一つの売りになることの多い昨今だが、彼らの魅力はそれだけではない。作曲やアレンジも木村や伊賀をメインに手がけ、全員が芸大や音大出身ということもあり、理にも技にもそれぞれの実力が光る。こう言うと真面 目なイメージばかりが全面に出てしまうが、もちろん素顔はそれだけではなく、テクノや民族音楽、そしてロックやポップスなど、メンバーそれぞれが独自の好みを持つ今どきの若者たちなのである。
 この強い個性の4人をまとめるのは、プロデューサーの伊藤秀治氏。フォトンのサウンドを聴くと、氏が3年をかけてこの逸材を集めた際に発した「この力量 、本当にハタチか?」という言葉もうなずける。日本に限らず世界のジャズ・シーンを視野に、これからも新しい光を注ぎつづけて欲しい。
(文・西原真志)


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