| 
         
          | 想像するほどジャズ・フォームから逸脱した演奏ではない |  
         
          | ウインドミルはボーカル、チェロ、ベースからなるユニークな編成のトリオ。そのユ ニークさがスペースを生かした独創的なジャズを生み出しているのだが、ユニークなもの
 を好まないジャズ・ファンも一度聴いてほしい。想像するほどジャズ・フォームから逸脱
 した演奏ではない。以前『10番街の殺人』というタイトルで出た作品の新装版だ。何より
 も興味深いのは女性シンガーのニカ・スチュワート。ニカはアメリカ人で、革新性が好ま
 れるパリに惹かれてニューヨークから移り住んだ。ニカは写真を見れば白人女性に見える
 が、ボーカルを聴けば黒人のジャズ・シンガーのように聴こえる。カーメン・マクレエ、
 カサンドラ・ウイルソンなどを思い起こさせる歌唱だ。声の質ばかりか、音楽性やアプ
 ローチも近い。8曲目ではゴスペル風の歌唱をみせているので、ゴスペル出身なのかもし
 れない。この曲ではさらにエディ・ハリスばりのヨーデルまで飛び出す。
 ウインドミルのこの音楽は、そんなニカ・スチュワートのボーカルとベースのジャズ性
 が高くて、そこにチェロが絶妙なコラボレートをみせながら音楽の色彩を付ける。冒頭曲
 が素晴らしい出来映えで、この曲の持つ情感を現代的なテイストで表現している。全体的
 に軽めの抽象的な表現を含むジャズが進行する中、ベンチャーズのポップな6曲目が雰囲
 気を変える役目を果たしている。曲と演奏のバランスもいいと思う。
 (高井信成)
 |  |