「イッツ・ジャズ」レーベル

----- Magi(マギー)2004年3月号より -----
美しく滑らかなピアノ・サウンド
 いささか異色の経歴(最高学府の原子力工学科卒!)の持ち主であ
るピアニスト、嶋津健一。これまでにも様々な挑戦と吸収を繰り返
し、その都度新境地を開拓してきた。それは能などの日本的なものと
のコラボレーションであったり、ダンスや絵画などの全く違うジャン
ルの心との融合であったり、既成のジャズの概念を打ち破る、新しい
試みが随所に施された彼ならではの音世界だったはずだ。今作「アン
フォゲッタブル」は96年の録音。85年に渡米しおよそ10年間ニュー
ヨークで活動した彼の帰国直前の想いがつまった音である。敢えてド
ラムを使用せず、ピアノとベースのみのシンプルなサウンド。それが
却って、彼の輝くようなピアノの音を引き立てている。
 パガニーニの狂詩曲をモティーフにした「奇想曲第24番」をはじ
め、ちょっと奇妙な「ハラペコ」、「わが心のジョージア」など、ス
タイルはいろいろだが、その根底にあるものは決してリズムに縛られ
る事なく、自由に泳ぎまわるメロディだろう。これが(私のようなク
ラシック側の)聴き手の耳をも心地よく浮遊させる。う〜ん。最高!
                           (堀内瑞穂)


 Copyright 2002 3361*BLACK, Ltd. All rights reserved.