「イッツ・ジャズ」レーベル

----- スイングジャーナル2004年3月号より -----
嶋津のジャズ観と音楽性が明確に示された作品

 ジミー・スコットの伴奏者をはじめ約10年間ニューヨークで活躍した嶋津
健一が、帰国後の1997年に「ダブルス(Double・S)/ 嶋津健一&スタン・
ギルバート」としてリリースされた作品で、今回はタイトル&ジャケットを
変更、嶋津のリーダー作として再登場する。(8)(13) は前回未収録の追加曲
だ。長年東京を拠点として活躍しているベースの名手スタン・ギルバートと
のデュオ作である。実質的にはピアノが主体であり、嶋津のファースト・ア
ルバムと捉えていいだろう。ラテン調にアレンジされたパガニーニの代表作
から始まるこのアルバムには、スタンダード・ソング、セロニアス・モンク
やウエイン・ショーターらの名曲、そしてオリジナル曲が収録されている。
嶋津のジャズ観と音楽性が明確に示された作品だ。
 嶋津は東京大学工学部原子力工学科を卒業した異色の経歴の持ち主。85年
に渡米してマンハッタン音楽院ジャズ科修士課程を修了した。ハロルド・メ
イバーンとマリアン・マクバートランドに師事した後、ジミー・スコットに
迎えられている。歌伴の名手という印象があったが、このアルバムを耳にす
れば、メロディの美しさを追求するとともに、卓抜したセンスと豊かな音楽
素養を身に付けていることがわかる。アレンジやアプローチに明晰な心地よ
さがあり、それでいて情感の表出を常に忘れないところが素晴らしい。ギル
バートのバーサタイルな鋭さも聴きものだ。        (高井信成)



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