「イッツ・ジャズ」レーベル

 

----- スイングジャーナル2003年7月号より---------------

 

出会うべくして出会った両雄の、真撃な共演がここに在る


 ラベルのボレロがそうであるように、「反復の音楽」は緊張と快感を孕んでいる。その一方、
退屈とまでは言わないものの、単調に陥りやすいことも確かだ。ジャズで「反復の音楽」とい
えばマル・ウォルドロンがその第一人者。
 4月から毎月リリースされている全5作品のシリーズ第3弾は「デュアル」という副題でもわ
かるように、マルと森山威男との対決編である。両者は長い間、競演を望みながらもこの日まで、
その思いを果たせなかったという。かれらの競演は、何処かでとっくに実現していたものと、私
などは思っていたが・・・。160名の聴衆とレコーディング・スタッフの前でおこなわれた演奏
について、藤井修照氏は“聴くものとして、これをジャズと言い切ってしまっていいのだろうか
と考えこませるほどの深みのある音の世界であった。かくして、この世のものと思えないインプ
ロビゼイションが展開されたのである。”と、ライナー・ノートで述べておられる。
 ここでのマルは、緊張感と快感をみなぎらせた「反復の音楽」を、退屈や単調とは無縁に響か
せて、聴く者に深い感動を与えようとしている。旋律がリズムに、リズムが旋律になるマル。そ
れを見事に支え、それと鮮やかに対決し、反発し、溶け合い、混ざりながら、自己を明瞭にし続
ける森山。出会うべくして出会った両雄の、真撃な共演がここに在る。
                                     (久保田高司)

 

 

 


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