「サ・バ」レーベル

----- スイングジャーナル2004年8月号より -----
想像するほどジャズ・フォームから逸脱した演奏ではない
 ウインドミルはボーカル、チェロ、ベースからなるユニークな編成のトリオ。そのユ
ニークさがスペースを生かした独創的なジャズを生み出しているのだが、ユニークなもの
を好まないジャズ・ファンも一度聴いてほしい。想像するほどジャズ・フォームから逸脱
した演奏ではない。以前『10番街の殺人』というタイトルで出た作品の新装版だ。何より
も興味深いのは女性シンガーのニカ・スチュワート。ニカはアメリカ人で、革新性が好ま
れるパリに惹かれてニューヨークから移り住んだ。ニカは写真を見れば白人女性に見える
が、ボーカルを聴けば黒人のジャズ・シンガーのように聴こえる。カーメン・マクレエ、
カサンドラ・ウイルソンなどを思い起こさせる歌唱だ。声の質ばかりか、音楽性やアプ
ローチも近い。8曲目ではゴスペル風の歌唱をみせているので、ゴスペル出身なのかもし
れない。この曲ではさらにエディ・ハリスばりのヨーデルまで飛び出す。
 ウインドミルのこの音楽は、そんなニカ・スチュワートのボーカルとベースのジャズ性
が高くて、そこにチェロが絶妙なコラボレートをみせながら音楽の色彩を付ける。冒頭曲
が素晴らしい出来映えで、この曲の持つ情感を現代的なテイストで表現している。全体的
に軽めの抽象的な表現を含むジャズが進行する中、ベンチャーズのポップな6曲目が雰囲
気を変える役目を果たしている。曲と演奏のバランスもいいと思う。
                                   (高井信成)


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