大ヒット曲「レフト・アローン」などで知られるジャズ界の巨匠、マル・ウォルドロン。
去る、12月2日ブリュッセルにて76歳で他界致しました。 そのマル・ウォルドロンの未発表曲を集めたアルバムを
3361*BLACKから急遽臨時発売致します。

 

12月2日、ブリュッセルからの電話を受けた後、
しばらく富士山を眺めているしかなかった。
富士山が見えないとマルはきまって
「いじわるして富士山を隠しただろう」と言った。
何回言ったんだろう。
何回きれいな富士山を見たんだろう。
それから3日経って、マルとの
7年のマスターテープを全部引っぱり出し、
ただただずっと聴いていた。
新たな感動に襲われ、そして、ふっと気づいた。
これはアルバムにしてないテイクだ。
その一瞬から必死で聴き出した。
何とも情けない、
こんなに凄い音を眠らせてしまいそうだったことを
ファンの方々とマルに詫びながら、
すべて未発表だけの名演で
「これぞマル」を作るぞ、と・・。
できた、確かに・・、しかし何だか疲れた。
―producer 伊藤秀治 ―

マル・ウォルドロン
 ニューヨーク生まれ。 大学卒業後、サックス奏者から
ピアニストに転じた。1950年代に米歌手ビリー・ホリデイ
の晩年の伴奏者として活躍。彼女の死を悼んで発表した
「レフト・アローン」のほか数多くの傑作を残した。
日本人女性と結婚して子供をもうけた。70年代以降、
何度も日本を訪問し、95年には長崎で平和祈念コンサートを
開くなど日本でも精力的な演奏活動を続けた。

 

 

---ライナーノーツより---
 実に若い。10〜20は若く見られる。しかし、マルだって疲れることはある。
多くのファンが詰め掛けてくれるのは実に嬉しいことである。
しかし、ファンにサインをし続けることはキツイ。
精一杯弾き続けたステージの後はなおさらのこと。ある時、手形を用意した。
これならゆっくりブリュッセルで手形を押しておいて、日本公演では握手で済む。
これはいい、と思ったのは我々だけか。
「ジャズ・ミュージシャンなのに、手形なんてダサイ」といった声が聞かれた。
その時は、そう考える人もいるんだ、と思ったが、今、ジャケットデザインにそれを使いながら、
「今は亡きジャズ・ピアニストの巨匠の手形、この手で、あの私達が感動した音を、
紡ぎだしてくれていたんだ・・。」と、感慨無量。
( 伊藤秀治)